2026.8.26 夏の夜長の書評コーナー フォークランド戦争 北川敬三 ちくま新書
連日猛暑ですが、久しぶりの書評コーナーです。
今回紹介する本は、「フォークランド戦争 北川敬三 ちくま新書」です。
本書は、1982年に南大西洋のフォークランド諸島(アルゼンチン名:マルビナス諸島)およびサウスジョージア島の領有をめぐって、イギリスとアルゼンチンの間で約74日間にわたって戦われた戦争を、包括的に分析した軍事・安全保障論の書です。著者は元海上自衛官で慶應義塾大学総合政策学部教授の北川敬三氏。台湾有事などの現代の安全保障問題を考える上で参考になる「総合的近代戦」として位置づけ、第二次世界大戦後初めて陸・海・空が相互に連関した本格的な戦闘の実態を徹底検証しています。
とくにフォークランド諸島という島嶼部において戦われた「総合的近代戦」として、日本における島嶼防衛、台湾有事、尖閣諸島、竹島問題、北方領土問題等を考えるうえで参考になります。
本書では、①なぜフォークランド戦争は起きたのか、②なぜイギリスが勝ち、アルゼンチンは敗れたのか、③現代に何を学ぶべきか の3点をテーマに解説がされており、具体的には、民主主義国家と専制主義国家の対峙、近代装備・技術の総動員、組織と人材の質、ロジスティクス、住民保護の視点などが強調され、「戦争はロジスティクスと人間が決める」という古典的命題を顕出しています。
イギリスが勝った要素としてはいろいろありますが、①フォークランド諸島はイギリスが実効支配しており、居住している島民の意思がアルゼンチンへの帰属意識ではなく、あくまでもイギリス人としての意識であること。②アルゼンチン軍に侵攻、占領を許したものの、イギリス側が奪還する強い意志があり、制海権、補給線などを確保できたこと。の2点が大きかったと思います。
日本における島嶼防衛、台湾有事、尖閣諸島、竹島問題、北方領土問題等を考えていくにあたっては、島民の帰属意識は非常に大きく、本書ではあまり言及されていませんが、ここに対する認知戦等については最大限の注意を払う必要があるかと思います。
以上、夏の夜長の書評コーナーでした。次回もお楽しみに。

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