2025.7.7 夏の夜長の書評コーナー ジェフ・ベゾス 果てなき野望 アマゾンを創った無敵の奇才経営者 2014年 日経BP社
古本まつり等の催事や、猛暑による夏バテもあり間があいてしまいましたが、書評コーナー再開します。
さて、今回紹介する本は「ジェフ・ベゾス 果てなき野望 アマゾンを創った無敵の奇才経営者」ブラッド・ストーン著 井口耕二訳 日経BP社 です。
ネット古書の出品サイトといえば、代表的なものに、アマゾン、ヤフオク、メルカリ、日本の古本屋等ありますが、その中でも「アマゾン」創業者ジェフ・ベゾスの生い立ちから、どのようにアマゾンを立ち上げ、大きくしたか、その始まりから電子ブック「キンドル」のリリースあたりまでを詳細に描いたノンフィクションです。ベゾスの経営哲学である「顧客第一主義」の裏側や冷徹な経営手法を克明に述べており、ビジネスモデル研究に役立ちます。残念なのは、2014年刊のため、10数年前までの話で内容がとまっていて、キンドルリリース後の、プライムビデオやプライムミュージックの裏側なんかはどうなっているのだろうと知りたくなりました。続編(後日談)が出ることを期待します。
ベゾスはもともとウォール街の金融会社出身であり、数字と情熱を重視した合理的判断を重視し、10年以上先を見据えた長期的な成長、顧客第一主義を貫き、ドットコムバブル崩壊をも乗り越え、今日のアマゾンを築き上げています。
その経営手法は、外部人材の登用、書籍の無限在庫を実現するためのデータベースの構築から始まり、さらには何でも扱う「エブリシング・ストア」へ突き進みます。さらには、マーケットプレイス機能で第三者出品を導入し、在庫リスクを分散巨大物流システムの構築で配送無料を実現し、顧客体験を優先します。競合のバーンズ&ノーブルやウォルマートとの激戦では、価格競争を仕掛け、相手を疲弊させる冷徹な戦略を展開します。AWS(Amazon Web Services)のクラウド事業やKindle電子書籍リーダーの開発では、社内反対を押し切り巨額の投資を敢行し、キンドル発表時、出版社に無断で電子書籍を9.99ドルで販売し、業界を震撼させます。
しかし、ベゾスの意思の体現を最優先し、部下への叱責、けたたましい笑い声、厳しい目標設定が社内文化を形成し、社員は過酷な労働環境(福利厚生の最小化、一対一ミーティング禁止)で消耗します。また、出版社や競合への苛烈な交渉(例: 買い物カゴボタンの除去強要)で批判を浴びることとなります。
日本でもアマゾンの配送センターの過酷な労働実態の暴露本が出るなど、顧客第一は得てして従業員の犠牲のもとに成り立っていることが多く、また取引先への攻撃的な姿勢など、「外資らしいブラックさ」が目立ちます。このような横暴なところは、スティーブ・ジョブスやイーロン・マスクとも共通な感じがします。
また、アップルでもそうですが、ベゾスが引退したあとの後継者はどうするのか気になります。ユニクロや日本電産みたいに外部から社長を引っ張ってきて、気にくわなかったら、また創業者が社長復帰するのでしょうか?
ちなみに、当店も、アマゾンに出品していますが、手数料が高い、操作方法がわかりにくい(書籍から何でも手を広げすぎたためかえって使いにくくなった感じがする)こともあり、洋書を中心に出品しています。また、一部の出版社の古本が出品できないのは、きっと出版社と喧嘩したからではないか?と想像しています。
いずれにせよ、購入者側からは便利ですし、カスタマーサポートや電話応対も良いと思いますが、サプライヤーや第三者出品者側から見ると果たしてどうなのだろうか?巨大な販売量、マーケットシェアによる優越的地位の濫用では?と思える時もあります。まあこれは、楽天市場等のネット販売ポータルサイトにも大なり小なりあてはまることかもしれません。
今回の書評はここまでにします。次回もお楽しみに。
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