芸備書房

2025.3.17 春の夜長の書評コーナー 夢と生きる バンドマンの社会学 野村駿 岩波書店

 3月の2回目の書評は、「夢と生きる バンドマンの社会学 野村駿 岩波書店」を紹介したいと思います。 

 この本は、「若者の夢追い」について社会学の見地から検討した本です。具体的にはバンドマンが夢を追う過程を社会学的な観点から考察したものです。段階として、夢を追い始める段階の「夢追いの選択」、夢を追い続ける段階を「夢追いの維持」、夢を諦める段階を「夢追いの断念」と捉え、夢追いの選択・維持・段階からなる夢追いライフコースの全容について解明しています。

 本書は「若者の進路問題」について、バンドマンを例として、その夢追い過程を社会学的アプローチから研究したものです。具体的には、バンドマンへのインタビュー、ライブハウスの観測等を通じて、バンドマンたちが、メジャーデビューという夢をかなえるための夢追いの過程を研究しています。

 私も古本屋稼業をしている中で、元バンドマンや現役バンドマンに接する機会が多く、なかなか身につまされるモノを感じます。本書が秀逸だと感じたのは、夢追い過程を3段階に分類して、それぞれの段階の特徴をうまく抽出している点だと思います。

 例えば、よくありがちな、中学や高校(あるいは大学?)で軽音楽部等を通して、バンド活動をはじめ、その後、進学就職等の進路選択の中で、中にはプロを目指して、フリーターをしながらバンド活動を続けるパターンや、進学就職を契機にバンド活動をやめる、あるいは正社員として仕事をしながら休日にバンド活動を愉しむパターンなど、分かりやすく整理分類しています。

 また、バンド活動を続ける中で、本気でプロ(メジャーデビュー)をめざすのか、あくまで趣味として楽しむのか、仮にプロをめざしたとしても、多くの場合は成功せず、挫折するか、途中で進学就職等するか、さまざまな節目節目での選択が迫られる模様を考察しています。とくにバンドの場合、一人ではバンドを組めない(とりあえずボーカロイド等は考察しない)ので、メンバー間での方向性や考え方の違いをどうするかなど、割とあるあるだなと身につまされる話ばかりです。

 本書では、バンドマンの夢追い活動に重要な要素として、ライブハウスという場を取り上げ、ライブハウスに出入りして、ライブハウスオーナーやほかのバンドマン等の交流、バンドのソロライブ活動や、バンドの対バンライブ等を通じて、夢追いのモチベーションを維持しているなど興味深い観察点も見受けられました。

 おそらく、社会学的にはべたなテーマの「若者の進路問題」について、バンドマンという視点から考察したところに秀逸さを感じます。役者やアイドル、歌手、お笑い芸人、画家、クラッシック演奏者、声楽家、プロスポーツ選手、Youtuber(動画制作者)、プロゲーマーとかでもよいのかもしれませんが、私にとっては、バンドマンを通じた分析が身近で分かりやすかったです。

 今回はここまでにします。次回もお楽しみに。

 

  

 

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