芸備書房

2025.3.6 春の夜長の書評コーナー 恋するソマリア 高野秀行 集英社ほか

 3月になりました。だんだん暖かくなってきたものの、まだまだ寒いですが、雛祭りも過ぎたことですし、春の夜長に改題したいと思います。

 今回の書評コラムは、「恋するソマリア 高野秀行 集英社」を紹介したいと思います。著者の高野秀行は、早大探検部出身で、冒険紀行を数多く執筆しています。本書でとりあげるソマリアをはじめ、コンゴ、アマゾン、ミャンマー、インド、中国、ブータン、ヒマラヤ、アフガニスタン等数多くの辺境を旅しています。また、その旅の過程で習得した語学習得法や、料理ガイドなど数多くの著作を記しています。

 恋するソマリアでは、前作の「謎の独立国家ソマリランド」の続編で、ソマリアに恋した筆者が、ソマリランド(旧英領ソマリランド地域)に通いながら、ついにソマリア(旧伊領ソマリランド)にも足を延ばし、取材活動をします。ソマリ人の独特の民族性、特に氏族社会の特長やソマリ人の気質、出身地出身身氏族による気質の違いなどディープなソマリア社会を詳細に記述しています。また、ソマリ人の公用語であるソマリ語にはまって、日本にいるソマリ人を探し当ててソマリ語を学習する話や、ソマリアに行くときにおつかいを頼まれる話など数多くのエピソードが満載です。いわゆるニュースや新聞で取り上げられるソマリアとは違い、現地に生活しているソマリ人目線、庶民目線で、ニュース新聞報道や国際政治学で取り上げられるソマリア像が、いかに偏っているかを視ることができます。本書を読み進むにつれて、新たな発見に目からうろこが落ちます。地球上のどの地域でも、人間の生活、人間臭さというのは共通しているということを発見し、腑に落ちる感覚を十二分に味わうことができます。

 彼の著作は数多くあるのですが、最近読んだ彼の著作で、「西南シルクロードは密林に消える 講談社文庫」も併せて紹介したいと思います。

 この本は、シルクロードが陸のシルクロード(中国ー新疆ー中央アジアーイランーヨーロッパ)、海のシルクロード(南シナ海ーマラッカ海峡ーインド洋ーアラビア海)、のほかに西南シルクロード(中国西南部ーミャンマーーインドーアフガニスタン)があるのでは?という説にもとづき、中国四川省から雲南省、ミャンマーのカチン州、ザガイン管区、インドのナガランド州、アッサム州、西ベンガル州コルカタまで、カチン族ゲリラ(カチン軍:カチン州)、ナガ族ゲリラ(ナガ軍:ザガイン管区、ナガランド州)の協力(エスコート)によって、山脈や密林の中を、徒歩、象、船、車によって移動する(もちろんゲリラの手引きなので、中国ーミャンマーーインド間は密入出国)というなかなかハードな旅です。その中で各民族の特長、ミャンマー内戦の背景などいろいろなことを知ることができます。

 ある意味、だれにも真似できないやり方で世界の裏側を知ることができ、好奇心を満たすことができるおすすめの本です。特に地理、歴史、民俗、政治マニアにはたまらないものがあります。

 今回はここまでにします。次回もお楽しみに。

 

  

 

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