2025.2.23 冬の夜長の書評コーナー あの国の本当の思惑を見抜く地政学 社會部部長 サンマーク出版他
今回の書評コラムは、あの国の本当の思惑を見抜く地政学 社會部部長 サンマーク出版 を紹介したいと思います。著者の社會部部長さんは、You Tuberで、主に国際情勢や歴史、地政学等の解説系動画を配信されている方です。昨今では、ロシアのウクライナ侵攻や、米中間の緊張等を背景として、地政学なるものが注目されていますが、この本は、古典地政学をベースとして、アメリカ、ロシア、中国、日本の地政学的状況を過去と未来にわたって解説しております。
そもそも地政学とは何かということですが、ウィキペディアによると「国際政治を考察するにあたって、その地理的条件を重視する学問」と定義されています。つまり、国際政治(軍事も政治の延長)を考えるにあたって、地理的条件を重視するのが特徴です。なぜなら地理的条件というのは何十年何百年何千年スパンでもあまり変化がないからです。例えば、国境地帯が平原なのか、険しい山岳地帯なのか、あるいは海なのかによって、国と国との関係性(特に国防という部分において)が変わってくるからです。とくに国境地帯が遮蔽物のない平原地帯で攻めやすい(攻め込まれやすい)大陸国家と、国境地帯が海で隔てられている攻められにくい(攻め込みにくい)海洋国家、そして大陸国家と海洋国家の橋頭保になる半島国家や国際海峡を有する(ジブラルタル海峡、ボスポラス海峡、マラッカ海峡、スエズ運河、パナマ運河など)国家なのかによって、国家防衛の在り方が変わってくるということです。
私が地政学なるものにふれたのは今から20数年前の東西冷戦~湾岸戦争のあたりに初めて触れました。そのころは地政学は、軍事研究につながるとしてある意味キワモノ扱いされていましたが、いまではポスト冷戦やアフガン内戦、イラク戦争、シリア内戦、ウクライナ侵攻、米中摩擦をへてかなり一般化してきているように感じます。
この本は、単なる国際政治情勢の解説ではなく、地政学のベースとなる古典地政学理論(マハン、マッキンダー、スパイクマン、ハウスフォファー等)をきちんと踏まえて、現在の国際政治情勢を解説しているところが良いです。本書では古典地政学については細かく触れていませんが、わりと簡単に知りたい方は、「地政学入門 曽村保信 中公新書」あたりがおすすめです。本のタイトルに「地政学」が含まれていても、古典地政学を踏まえていない本も結構多いのでそこは要注意です。
地政学に触れると、国家とは何か、国家主権とは何か、軍事(戦争・紛争)とは何か、領土領海領空とは何か、国際連合と何か、国際公法とは何か、など幅広いことに興味、関心が持てるようになると思います。
今回はここまでにします。次回もお楽しみに。
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