芸備書房

2024.8.11 夏の夜長の書評コーナー 「新幹線全史」竹内正浩 NHK出版新書 

引き続き最近読んだ本の紹介。「新幹線全史」竹内正浩 NHK出版新書

 

 

 今回取り上げる本ですが、新幹線計画の誕生(戦前の弾丸列車計画)から整備新幹線まで、日本の新幹線整備計画の一連の流れを追ったものです。弾丸列車構想(東京ー下関間の計画)+東海道山陽新幹線、その後の東北、上越新幹線、そしてJR化のちの北陸、九州、北海道新幹線の3つについて分けて考察している。

 新幹線を考えるにあたっては、新幹線計画そのものも大事であるが、鉄道省(国家直営)→日本国有鉄道(公社)→JRグループへと環境が変化していることに留意する必要がある。そもそも国鉄の分割民営化の大きな要因として、国鉄の財政悪化(主に赤字ローカル線と、政治押し付けの新線建設の償還費用、政治によって運賃の適切な値上げが行われなかったこと、昭和20年代に復員者を大量採用したことによる年金債務の増大)、国鉄の労使問題などがあげられる。そして、JR発足後いかなる経緯をたどって整備新幹線計画が復活したのかを述べている。

 この本を読んで、やはり弾丸列車計画→高度経済成長時代→日本列島改造論(田中角栄)→分割民営化→整備新幹線計画の復活という一連の流れを理解するとともに、国鉄の諸問題、国土開発(要するに政策的観点)上の整備新幹線の目線を保持する必要があり、そういった観点でいうと1冊でコンパクトにまとまっている良書といえる。

 国鉄の諸問題については、多数参考書があるが、財政、労使問題についてコンパクトにまとまっている本として「嗚呼「国鉄」その再生への道 南整 編著 日本リーダーズ協会 1982年」を上げたい。また、整備新幹線と国土開発の観点でいうと、ミスター新幹線といわれた故小里貞利元大臣の著作「新世紀へ夢を運ぶ整備新幹線」文芸春秋 2007年 を上げたい。

 当店では、鉄道、交通関係本等取り上げていますが、国鉄労使関係や鉄道整備計画等の資料なども扱いがございます。お気軽にお問合せください。

 今回はここまでとします。また、古本屋稼業で出会った、興味深い書籍を時々紹介させていただきます。次回をお楽しみに。

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