芸備書房

2025.4.19 春の夜長の書評コーナー 新聞経済記事の見方 久保靑々子 新洋社

 4月の3回目の書評は、「新聞経済記事の見方 新洋社 昭和8年刊」を紹介したいと思います。

 たまには古本屋らしく戦前のレアな資料を解説してみたかったので、今回この本を取り上げることにしました。「新聞経済記事の見方」とあるように、新聞の経済記事、具体的には市況相場欄の見方や用語の解説本です。現在でも日経新聞市況欄の読み方的なハウツー本がありますが、この本は戦前なので、今とはマーケットが扱っている商品が異なることです。株式市場ならありますが、株式先物取引や株価指数取引で扱う銘柄が今とは違うこと(昔なので、鐘紡とか南満州鉄道とか日本精糖とか当時の大企業)のほか、債券市場でも国債の種類や社債の種類が違ったりします。

 そのほか特徴的なのが、商品取引、商品先物取引で、今はない「米」の現物、先物取引があったり、生糸、綿糸、綿花、砂糖、豆粕、人絹などがあることです。今はどちらかというと、貴金属(金・銀・白金・パラジウム)、ゴム、エネルギー(CME原油など指数)、農産物(大豆・小豆・とうもろこし)などであり、だいぶ商品が異なることに時代を感じます。

 また、この本では当時の海外市場での国債、公社債、商品現物先物市場についても触れていますが、商品だと英米銀、ニューヨーク生糸、ニューヨーク綿花、ムンバイ綿花、ニューヨーク砂糖、ロンドン砂糖、スラバヤ砂糖、シカゴ小麦、ニューヨーク電気銅、上海綿花などがあげられており、現代の商品現物先物市場での主力商品とはだいぶ異なってることが面白いです。

 現代ですと、小麦、トウモロコシ、大豆、コーヒー、原油、電力、石炭、LNG、貴金属あたりが中心なのでなかなか面白いです。

 江戸末期から明治、大正、戦前の書物や資料に触れて、その当時の息吹を是非感じてみてください。

 今回の書評はここまでにします。次回もお楽しみに。

 

  

 

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