2025.1.18 冬の夜長の書評コーナー 神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く 石井光太 新潮文庫
あけましておめでとうございます。
書評コラムですが、しばらくさぼっていてすみません。いそがしかったのと、本を読んではいたのですが、書評を書こうと思う本(書きやすい本?)がなかったので時間が開いてしまいました。
今回は新潮文庫「神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く」石井光太著 を紹介したいと思います。
イスラーム圏において性を売る(売春する)現地の人々のドキュメンタリーなのであるが、著者は、取材対象者と同じような場所、時間を過ごして、淡々と事実を書いていくその筆致はすごいなと思います。
上から目線や、ある種の思想(たとえばフェミニズムとか)を入れずに、取材対象者の目線になりきろうとしているところ(例えば、売春宿の手伝いをしたり、スラムに通いつめたりなど)、時には取材対象者と笑い、悲しみ、同じ時を過ごすその人間臭いところに、私はひかれました。
取材対象者は、いわゆる難民(イラク、パレスチナ、ロヒンギャ、アチェ、アフガニスタン、東チモールなど)や貧困による孤児、ストレートチルドレンなどさまざまです。
内容を読むとあまりにもすごい(ドラマチック)すぎて、作り話ではないかと思うほど、衝撃的であり、ある種のヒューマニズムやフェミニズムなどは微塵の役にも立たない現実を突きつけられた思いがします。
そうした過酷な現実のなかでも、来世の幸せを一縷の希望として、苦しい現実を生き抜くしかすべがないという人間の強さ、業みたいなものを感じ取れる良書です。
具体的な内容、エピソードにはあえて触れません。手に取って読んでみて衝撃を味わってください。
個人的には、説教臭くないのがいいです。次回もお楽しみに。
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